銀行融資の知識

24.融資担当者が「YES」と言わざるを得ない事業計画書とは

まずは「銀行交渉用に初めて作る事業計画書」について説明しましょう。

本来、事業計画書は経営の指針となり、従業員とビジョンを共有するためにあるべきものであることはいうまでもありません。

ただ、実際問題、中小企業にとっては、政治や経済といった社会情勢のちょっとした変化が「荒波」になってしまうので、計画を立てても、修正に次ぐ修正が必要なってしまうため、実行可能性が乏しいといった問題があります。

また、従業員とビジョンを共有と言っても、一流商社なみの従業員を抱えられれば、すぐにでもそれが可能になりますが、そのレベルまで従業員を教育するのは、実際には非常に困難ですので、事業計画書を実際の経営に活かせている例は少ないと思います。

皮肉ですが、「作って満足しているのは社長と会計事務所」ということもあるかもしれません。

ということで、「銀行提出」の必要性が差し迫った時に初めて事業計画書を作るといった場面に遭遇するという会社も多いのではないかと思います。

ここではそういう時に、どこに気を付けて作成すれば良いのかについて、考えてみたいと思います。

大切なのは「第一にスピード、第二に返済可能性、第三に過去との整合性、第四に実現可能性」です。

事業計画書にはスピードが求められる!

まずは、第一のスピードですが、提出の必要性に迫られているのに「せっかくだから現場の声を聴いて積み上げ式で」などと悠長なことを言っていてはいけません。

過去のデータと現実的にとれる施策から「銀行提出用」と割り切って作りましょう。

第四の「実行可能性」にもつながりますが、だいたいの場合、時間をかけすぎると「現実離れ」を起こします。

得てして経営者は「売上高昨年度対比15%増!」などという「営業目標」を基準にして売上を組み立てた事業計画を作り、できるだけ会社をよく見せようという傾向があります。時間をかければかけるほど、理想論ができてしまうのです。ここは割り切って諦めることが大切です。

どれだけ借りたお金を返せるかのシミュレーション

第二の「返済可能性」、借入を申込む際、銀行が見るのは「貸した金が返ってくるのか」です。

当然「返せる」ことが証明できる計画でなければ、意味がありません。

ここも見られる!過去決算との数値の連続性

第三に過去との整合性、過去の売上高が減少傾向にあるのに、ここで急に増加に持っていっても信頼されません。過去:将来=99:1ぐらいの信頼性と考えて下さい。

売上高成長率、固定費、売上債権回転率、買入債務回転率、在庫回転率等については、過去のデータに基づいた数値を使った方が信頼されます。

また、これら「前提条件」をリスト化することも忘れないようにしましょう。

業績回復をアピールしたいのであれば、「切詰られる固定費」を箇条書きで列挙し、その影響度を示すのが効果的です。例えば、生命保険の解約...○○千円、従業員の福利厚生費...○○千円などです。

とにかく、過去の決算書、試算表からのつながりを断ち切ったような事業計画書は信憑性が低いので、提出しても意味がありません。しっかりと継続性を保った形で作成しましょう。

また、過去とのつながりを断ち切り、改善策を折り込んだ部分ついては、「現実的な路線で、かつ、根拠を示す」ということが大切です。

絵に書いた餅にならないための事業計画書にするためには?

そして第四の「実現可能性」についてですが、一言で言うなれば、銀行に融資を説得できるのは「売上がいくらまで減っても返せるか」という視点で作成した事業計画です。

むしろシミュレーションに近いと言えます。「営業予算」で組んだ「絵に描いた餅」的な事業計画などを出したところで、意味がありません。

また、売上や仕入などについては、受注の内定書や見積もりなどの裏付け資料を添付することで、実現可能性をアピールすることができます。

事業計画書の書式等については、公認会計士協会の「中小企業のためのキャッシュ・フロー計算書作成シート及び経営計画書作成シートの改訂について」http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/main/post_314.html を利用されるのが良いと思います。

言うまでもありませんが、計画書の各数値に関して、整合性が保たれていることが前提となります。

上記シートを使う場合には、余程自信がない限り、エクセルの参照を変えない方が無難です。そして、最後に、「はじめての事業計画書」を無事卒業された方に一言。

まず今回、初めて「借りた金を返す計画を数字で示した」訳ですから、これからは、「実績をきちんと報告する」ことが大切です。

「計画にそって運営できる能力を証明する」これが事業計画書の一番の担保となります。

銀行との取引においては、こうして築く信頼が一番なのです。

中小企業においては、社員を鼓舞するために作る「ビジョンを語る」事業計画と、銀行提出用の「有言実行を示す」事業計画は分けて作成するべきだと、私は考えています。

もちろん両者が一致するのが理想ですが、世の中、理想で動いている訳ではありませんので。

本音を言うと、「事業計画書を提出する」というのは「正統派」の銀行交渉であって、いわゆる「かけひき」を意識した交渉において「負け」ということになります。

あくまでも、融資担当者と支店長が積極的に動いてくれて、社内稟議を通してくれるような状態を作るのが理想ということを忘れないで下さい。

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