銀行融資の知識

26.経営上必須の資金繰りのコツとは

現実的ではない経営分析の教科書

「資金繰り改善策」についてはどんな本を読んでも、「売上の回収を早める」「在庫をなるべく持たない」「支払はできる限り引き延ばす」と書いてあります。
しかし、「在庫」を除いて、取引先との力関係を考えると、こちらからお願いすることができる余地は小さく、現実的でないことがほとんどです。

「ダメモト」で交渉してみるのも一つだとは思いますが、やはり「銀行借入」で運転資金をある程度潤沢に持っておくというのが、実行可能性の高い方策なのです。

経営分析の教科書に出てくる「必要運転資金と適正有利子負債」の考え方は無視しましょう。

ギリギリの資金繰りを検討するための要員は揃えるだけ無駄?!

確かに必要運転資金を計算して、最低限度の有利子負債で回すことは可能かもしれません。

しかし、中小企業でも1%後半の金利で資金調達ができる時代において、「金利」と「資金繰りをギリギリで回すべく計算をする従業員」の人件費とどちらが経済的かを比べてみて下さい。

余程借入金が大きくない限り、金利の方が低いことが分かるはずです。表面的な「もったいない」に惑わされないことです。

運転資金は設備投資に回すべからず!

また、中小企業にありがちなのが、「お金があったので運転資金を使って設備投資をしてしまう」という間違いです。

運転資金と設備資金は絶対に分けて考えて下さい。

ここを間違えると「黒字倒産」します。

担保設定または質権設定できる資産については絶対に「設備資金」で借入を行って下さい。できれば、設備投資は「全額借入」を目指したいところです。

設備資金で借入を申込むと、銀行がその「設備投資が適切かを検討してくれる」という副産物がついてきます。

相談相手が不足気味な中小企業にとって、これはありがたいことです。また、設備資金では「リース」や「割賦」も検討したいところです。

銀行は「銀行借入総額」という枠で一義には考える傾向がありますので、むしろ「リース」や「割賦」を限度額まで使ってから、銀行の「設備資金」を考える方が良いかもしれません。

リースと銀行借入...経費化の際の違いは?

すこし話はそれますが、「リース」と「銀行借入」どちらが得ですか?という質問を受けることが良くあります。

 「リースは経費になるから有利」と、訳の分からない都市伝説のような定説がありますが、リースでも借入でもどちらでも経費になります。

リースはリース期間の定額で経費になり、借入は固定資産の耐用年数で、減価償却を通じて経費になるだけの話です。

リースは税務上の耐用年数より短い(耐用年数によって70%または80%)[Wユ1] 期間で組んでも、支払ったリース料が経費として認められるので、「早めに経費化できる」場合があります。

しかし、耐用年数5年とした場合、定率法の償却率は40%ですから、4年リースの定額法の20%と比べて圧倒的に借入で「定率法」償却した方が有利となります。

ただ、リースの場合、動産保険込の場合があります。金利+返済総額とリース支払総額のどちらが低いかの検討は必要になります。

銀行対策にはリース会計が使える?

余談ですが、平成20年4月から導入された「リース会計」を使うことで、「営業キャッシュ・フロー」が大きくなる場合があります。

中小企業の場合、「処理が少し面倒」とか「簿外負債をわざわざオンバランス化することで負債が大きく見える」といった理由から、リース取引に関わる処理を「賃貸借処理(損益計算書に支払リース料勘定があればこの処理)」することが多いと思います。

この場合、リース料は「営業キャッシュ・フロー」から差し引かれることになります。

ところが、リース会計を使うと、購入時に「リース債務」というという負債科目で処理され、これが返済された時には、「財務キャッシュ・フロー」で処理されることになります。

支払いが同じなのに、会計処理の違いで、「営業キャッシュ・フロー」か「財務キャッシュ・フロー」かが分かれるのです。

銀行交渉には営業キャッシュ・フローが大きい方が有利ですので、後者の方が有利になります。

 「負債が多く計上されてしまう」とはいえ、銀行に「リース債務の残高を提出してください」と言われてしまえば、それまでのことですので、「透明性を高める」という意味でも、「リース債務」を使った処理をお勧めします。

最後になりますが、潰れない経営を目指すのであれば、「当座預金」を持たなければ、余程のことがない限り会社はつぶれません。

いま銀行が一番心配しているのが「手形事故」です。銀行がどんなに返済の猶予をしようとも、午後3時の決済期限に手形が飛んでしまえば、どうすることもできません。

「期限の利益」を喪失して、一気に倒産への階段を転がり落ちることになります。

逆に「商品に現金を乗せて売っているような」本当の赤字経営でない限り、「手形」さえなければ会社を潰す方が難しいのです。

特に現金売上のある業種はこの傾向が顕著です。

「小切手」だって「振込」に変えてしまえば必要ありません。すぐにというのは難しいかもしれませんが、「支払手形」勘定のある会社は、経営状態の良い内に銀行借入に置き換えていく努力をすることは非常に効果的だと思います。

経営状態が悪くなってからは絶対に無理ですので。

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